40代から考える老後のお金[5] 自助年金とマイホームの活用を考える

40代から考える老後のお金[5] 自助年金とマイホームの活用を考える

写真/PIXTA

老後資金に不安がある人ほど、退職金を使って投資で大きく増やそうと、リスクの高い商品に手を出してしまいがち。そうならないためには、40代の今、老後資金のために利用できる有利な制度を使い、確実に貯蓄をしていくことが大切です。またマイホームを保有している人は、老後のために活用することができます。ファイナンシャル・プランナーの畠中雅子さんに、老後資金のつくり方について伺いました。
【連載】40代から考える老後のお金
子どもの教育費や住宅購入など、今の40代は大きな出費が複合的に待ち構えている時期でもあります。さらに老後資金もとなると、ただただ不安に思ってしまう人も少なくありませんが、やみくもに不安になっても仕方がありません。安心して老後を迎えるために、今、やっておくべきことを全5回の連載で考えてみます。

勤務先や働き方によって、利用するマネー商品は変わる

一度にまとまったお金が入る退職金。これを投資に回してしまう人が少なくありません。確かに、60歳定年退職後は、公的年金の不足分を貯蓄から取り崩して生活することになります。しかし、これまで投資をしたことがないのに、いきなり投資を始めてしまうのは、リスクが大きいといえます。

「今から投資の勉強を始めて、少しずつ実践してみる、というのはいいのですが、退職金をあてにして、退職金を元手に投資で増やそうというのは、間違い。また、投資のことを考える前に、40代は、貯蓄で確実に老後資金を準備することが大事です。ただ、勤務先や働き方、収入によって、どんな貯蓄商品を使えばいいのか、その優先順位は変わってきます。どんな制度を活用できるのかを、理解してほしい」と畠中さんは言います。

以下、4つのタイプ別に畠中さんがおすすめする貯蓄の方法をご紹介しましょう。

(1)会社員、公務員なら財形年金貯蓄を使う
(2)財形年金貯蓄制度が導入されていない場合は、ネット銀行を活用
(3)自営業者は国民年金基金で公的年金の上乗せを
(4)余力があれば、個人型確定拠出年金を検討

(1)会社員、公務員なら財形年金貯蓄を使う
勤務先が財形貯蓄制度を導入しているなら、財形年金貯蓄が最優先となります。55歳未満までに積み立てを開始し、60歳以降、5年~20年にわたって年金として受け取ることができます。貯蓄残高550万円までは利子が非課税という特典がありますが、「550万円を超えると利子非課税ではなくなりますが、気にせず積み立てを続けてもいいでしょう。個人年金とは異なり、財形年金は受け取り時に雑所得とはならず、税金がかかりません」と畠中さん。

さらに、財形年金貯蓄は、給与天引きで1000円単位の積み立てができ、増減も自由。「子どもの教育費がかかる時期は、積み立てを休むこともできます。確実に貯められ、柔軟性のある貯蓄制度を活用してほしいですね」

(2)財形貯蓄年金制度が導入されていない場合は、ネット銀行を活用
勤務先に財形年金制度がない会社員は、ネット銀行の積み立て貯蓄が候補になります。ネット銀行の定期預金は、一般の銀行に比べて金利が高め。加えて、常に利用している銀行口座と分けておくことも確実に貯められるコツです。

「ただ、給与振込口座を複数指定できないと、自分で振替をしなくてはなりません。現在、ソニー銀行、じぶん銀行、住信SBI銀行の3行は、自分の指定した金融機関の口座から、毎月自動的に振替をしてくれるサービスがあります。普通預金口座に入金されるので、定期預金への振替は自分で行う必要がありますが、少しでも金利が高いものを利用することも大切です」

(3)自営業者は国民年金基金で年金の上乗せを
自営業者の場合は、国民年金基金で、公的年金の上乗せが優先になります。会社員など厚生年金加入者は、国民年金+厚生年金+(厚生年金基金、企業年金など)となっており、2階建て、3階建てと言われています。しかし、自営業者の場合は、基本的には国民年金のみで、将来の受け取り額は会社員に比べ、非常に少ないのが現状。そこで、国民年金基金に加入して、自分で公的年金を2階建てにするわけです。

【図1】会社員の公的年金は手厚い。自営業者は国民年金基金を使って、不足額を補うことが大事(出典:国民年金基金連合会のサイトより抜粋)

【図1】会社員の公的年金は手厚い。自営業者は国民年金基金を使って、不足額を補うことが大事(出典:国民年金基金連合会のサイトより抜粋)

「掛金月額は、加入口数、加入時の年齢、性別によって決まります。終身年金と確定年金があり、口数の決め方は少し難しいかもしれません。金融機関などで相談するといいでしょう。なによりも、国民年金基金は、月額6万8000円まで掛けられ、その全額が所得控除になります。自営業者にとっては、相当な節税効果があるはずです」

(4)余力があれば、個人型確定拠出年金を検討
2017年1月から、制度拡充されることになった「個人型確定拠出年金」。勤務先に企業型確定拠出年金がない会社員、自営業者、パート主婦などが対象になりますが、畠中さんは「優先的にやるべき貯蓄をして、余力があれば加入を検討すればいい」と言います。

「元本確保の預貯金などもありますが、基本は投資信託を自分で選び、運用をチェックしなくてはなりません。40代で子どもの教育費を捻出し、住宅ローンを抱え、運用までなかなか手が回らないはずです。制度が拡充したからといって、優先的に始めるべきではありません。運用結果に気をとられるぐらいなら、毎月の積み立てを1万円から1万1000円に増額などの対応をすればいいのです。10%元本を増やせるなら、10%の利回りで運用したのと似たような効果が得られるからです」

60歳から65歳の無年金期間。少しでも収入を得る

定年退職後に一番問題になるのが、公的年金の受給までの5年間。現在40代の人は、厚生年金も国民年金もすべて65歳からの受給になります。

この空白の5年間をどう過ごすかによっても、本当の意味でのリタイア後の生活は変わってくるでしょう。継続雇用、再雇用制度が進み、今現在でも、60歳定年以降も働く方が増えてきています。継続雇用、再雇用で収入が減った分を補てんする「高齢者雇用継続基本給付金」などの制度もあるので、生活が一変するということもありません。

「65歳まで働かなければならない、と考えると気が重くなるかもしれませんが、たいていは1年更新になるので、1年、2年、3年と自分の都合で働く期間を決めてもいいのではないでしょうか」と畠中さんは言います。

「週に2~3日働いて、月に3万~5万円の収入でもいいのです。外に出て、地域との新たなコミュニティに参加したり、会社員時代とは違うつながりをもつことも、その後の生活のためには重要なことです」

マイホームを老後資金として活用することも考えておく

住宅ローンの返済中に、老後の住まいについては、考えが及ばないかもしれませんが、畠中さんは、老後資金の最後の砦は、マイホームだと言います。

「将来、高齢者施設に入居する場合、自宅を売却、もしくは賃貸に出せば、入居費用の心配が減ることになります。高齢者施設ではなくとも、住み替えをすることで、売却益を得られる場合もあります。60歳になってからマイホームの活用を考えるのではなく、今から夫婦で話し合っておいてもいいのではないでしょうか」

40代で住宅ローンの目途がたち、住宅ローン控除の期間が終了しているなら、2軒目を購入し、現在の自宅は賃貸に出すという考え方もあります。

「所得が多い現役世代のほうが、支払う税金も多く、減税効果は高くなります。2軒目の購入で、再び住宅ローン控除を使うことができます。2軒保有するのではなく、現在の自宅を売却した場合、譲渡損が出るようなら給与所得と損益通算ができ、控除しきれなかった分は、翌年以降3年間、損失を繰り越して控除できるのです。不動産の活用は老後に限った話ではありません。これからマイホームを購入する世帯であれば、将来、貸せる物件なのか、売却できる物件なのか、という観点をもって、不動産選びをしてほしいですね」

畠中雅子さんから まとめのアドバイス

50代になると、意外と物事が早く過ぎていくものです。あと10年たてば、子どもの大学進学でお金のやりくりに追われるかもしれません。自分たちの老後が見えてくるにもかかわらず、手を打てなくなるかもしれません。だから、40代の今、どれだけ先の計画をしておけるかが大事なのです。40代で頑張った人は、60代以降で成果が必ず出るのです。

●取材協力/畠中雅子さん
ファイナンシャル・プランナー、生活経済ジャーナリスト。新聞・雑誌・ネットで多数の連載を持ち、セミナー講師や個人の家計相談でも活躍中。生活実感のある家計アドバイスに定評がある。著書は『どっちがお得? 定年後のお金』など60冊を数える。「子どもにかけるお金を考える会」、高齢者施設への住み替え資金アドバイスをおこなう「高齢期のお金を考える会」、ニートやひきこもりのお子さんを持つご家庭に生活設計アドバイスをおこなう「働けない子どものお金を考える会」を主宰している。
子どもにかけるお金を考える会HP
●参考
・ソニー銀行/おまかせ入金サービス
・じぶん銀行/定額自動入金サービス
・住信SBIネット銀行/定額自動入金サービス
国民年金基金
個人型確定拠出年金
引用元: suumo.jp/journal

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