このたび、住宅金融支援機構の住宅融資保険を活用したリバースモーゲージである、【リ・バース60】の利用実績が公表された。どういう制度で、誰がどういった目的で利用しているのだろうか?
「【リ・バース60】の利用実績等の公表について」/住宅金融支援機構
リバースモーゲージってどんなもの?どんなメリットがある?
リバースモーゲージを直訳すると、「逆抵当融資」となる。持ち家を担保にお金を借り、長期間にわたって元金と利息を返し続けて完済に至るのが、一般の住宅ローンだ。これに対し、持ち家を担保にお金を借りる点は同じだが、お金を一括して受け取って利息だけを返し続けたり、お金を年金のように分割して受け取ったりして(利息は元本に加算)、最終的には死亡時に持ち家を売却して完済するのが、リバースモーゲージだ。
リバースモーゲージを取り扱っている金融機関はまだ少ないが、商品設計、つまり担保の条件や借りたお金の受け取り方、返し方などはそれぞれで異なる。融資限度額は、おおむね土地の評価額の50%~70%程度とする事例が多く、利用するには相続人の同意なども必要となる。
リバースモーゲージの最大のメリットは、持ち家を所有し続けることができる点だ。年金暮らしで収入は限られるが、貯蓄を使ってしまうのは不安なので、持ち家を活用したいと考える人も多い。持ち家を相続で残すことはできないが、住み続けながらまとまった現金を手にできるというメリットがある。
【リ・バース60】とは、どんなリバースモーゲージ?
【リ・バース60】は、60歳以上を対象として、住宅金融支援機構の住宅融資保険を活用したリバースモーゲージで、提携している一部の金融機関で取り扱っているもの。毎月の返済は利息のみで、元金は死亡時に住宅や土地の売却代金などで一括返済する。
特徴は、住宅のリフォーム費用や本人または子ども世帯が居住する住宅の購入資金、住宅ローンの借り換え資金、サービス付き高齢者向け住宅の入居一時金など、住宅に関する融資に限定されていること。融資限度額は、担保評価額の50%または60%までで、購入資金や建設資金の場合は5000万円、リフォーム資金や入居一時金の場合は1500万円などとなっている。
【リ・バース60】はどんな利用をされている?
さて、住宅金融支援機構が公表した【リ・バース60】の平成29年度の利用実績だが、金融機関から住宅金融支援機構に住宅融資保険を付保するために申請があったのは174戸、付保されて融資が実行されたのは68戸で、いずれも対前年度で400%を超える伸びを見せている。取扱金融機関は38機関で、実行された融資額は8.5億円にのぼる。
利用申込者の属性を見ると、平均年齢は72歳、平均年収は330万円、60%が年金受給者で、神奈川県(16%)・千葉県(12%)・東京都(8%)が上位を占めるなど首都圏での利用が圧倒的に多い。
筆者が注目している「資金の使い道」を見ると、想定していたのは、長く住むための建て替えやリフォームだったのだが、結果は次のようなものだった。
・新築マンション購入(40%)
・新築一戸建て建設(31%)
・一戸建てリフォーム(13%)
・借り換え(8%)
・その他(8%)
「新築マンション」を自分が住むために購入したものなのか、子ども世帯の購入を支援したものなのかは不明だが、利便性のよい新築のマンションを買って一戸建てから住み替えるという人は多いのだろう。その場合、担保となる持ち家の方は貸すのだろうか、なども気になるところだ。
「一戸建ての建設」は、建て替えが多いと見てよいだろう。老朽化してきた一戸建てを建て替えたり、リフォームをしたりという使い方をした人も、やはり相当数いたようだ。
購入や建設などに必要な額は3391万円、借りた額は1691万円、毎月返済額は3.5万円というのが、利用者の平均像だった。
また、【リ・バース60】のもう一つの特徴が、「ノンリコース型」を用意していることだ。
リバースモーゲージのリスクとして、「金利上昇」や「不動産価格の下落」のほか、「長生き」のリスクがある。これらによって、死亡時に売却した代金よりローンの残債のほうが多くなる可能性が生じる。この場合に、相続人が残債を一括返済する「リコース型」と、売却代金で清算されて相続人に請求が生じない「ノンリコース型」がある。
【リ・バース60】では、住宅金融支援機構の住宅融資保険を利用することで、金融機関が残債を回収できない事態を回避することができるために、「ノンリコース型」の用意ができるようになる。利用実績では、ノンリコース型が61%、リコース型が39%となっていた。
高齢化が進み、親世帯が老後資金を十分に用意する必要がある一方で、相続時にはすでに子ども世帯がマイホームを構えていることが多くなる。そうだとしたら、持ち家は自分のために利用すると割り切って、リバースモーゲージの活用を検討してもよいだろう。
最近では「リースバック」と呼ばれる商品も登場している。リースバックとは、持ち家を売却して買主とリース契約を結び、買主に賃料を払いながら自宅に住み続ける方法だ。
いずれの場合も持ち家に住みながら現金を手にできる方法だが、どんな家でも利用できるわけではない。取り扱い先が限られるうえ、思っているよりも条件は厳しいと考えたほうがよいだろう。人生100歳の時代を迎える今こそ、持ち家の価値を見直して、老後の資産設計を考えてほしいと思う。
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