インスタグラムで人気のキーワードといえば「猫」。多くのフォロワーを魅了するスター猫たちは、どんな暮らしを送っているのだろう。暮らしの工夫や写真の撮影のコツなどを聞いてみた。
どんこちゃんが、グレーが美しいモルタル仕立てのリビングへご案内
取材スタッフがお邪魔すると、井上さん・外山さんとともに玄関でお出迎えをしてくれたどんこちゃん。人見知りはせず「お客さんが大好き」というどんこちゃんが案内してくれたのは、モルタル仕立てのグレーが美しいリビングだ。
「最初はここまでモルタルにするつもりはなかったんです。床はモルタルにしたくて、壁はほかの素材も検討していたのですが、雰囲気も統一できるので結局全部モルタルにしました。ただ、最初の1~2週間は筋肉痛になりましたけど(笑)」(外山さん)
「モルタルの床ってすごく足が疲れるんですよ。もう慣れましたけどね(笑)。フローリングも硬いと思いつつも、やはり木の弾力性ってあるんだなと思いますね」(井上さん)
二人が中古マンションを購入・リノベーションしたのは2011年。購入の際は、物件探しからリノベーションまでをトータルでお願いできる会社に依頼をしたそう。物件を探す際に、まずポイントとしたのが立地。
「仕事柄、遠くに住んでいても都心に来ないといけないことが多いなかで、私は出かけるギリギリまで寝ていたいタイプなので(笑)、移動時間が少ないとなると都心かなと」(井上さん)
「建物の価値ってすぐ下がってしまいますけど、土地の値段ってそこまで急には下がらないから、とりあえず立地で選んだほうがいいですよとお願いしたその会社の方に言われて。広さは、それは広いに越したことはないですけど予算の範囲内で。二人だけの生活だし、それほど広さが必要でもないですしね。あと20平米くらい広ければいいなとは思いますけど、多分もう少し広くてもあと20平米くらいあればと思うだろうし、結局きりがないんですよね。あと、狭いほうが掃除が楽ですしね」(外山さん)
立地とともにこだわったもうひとつのポイントが、猫と暮らせることだ。ペット可物件を購入し、時を同じくして出会ったのが、どんこちゃんだった。
「以前からたまに、友達が旅行に行くときなどに猫を預かったりしていたんです。その子も愛想がよくて、膝の上に乗ってくるのを見ると猫と暮らすのもいいなと思って。その子も保護猫で、そういうシステムがあることを知って、インターネットの譲渡サイトで探しているときにどんこを見つけて。『こいつだ!』と思ったんです。けれど、外山さんや友人に見せたら、『なんでこいつなの?』と言われて(笑)」(井上さん)
「里親さんがガラケーのカメラ機能で撮った写真だったので、画質もすごく悪いしピンとこなかったんですよね(笑)。でも、井上が飼いたいという気持ちがあるならいいかなと思って」(外山さん)
「私が『こいつがいい!』って引かなかったんですよね。会いにいったら、ほかの子が隠れたりシャーシャーって声を出しているなかで、どんこはのんきにウロウロしていて、私のほうに近づいてきて。それはもう運命だと思っちゃいますよね」(井上さん)
部屋は猫も人も心地よく、すっきりと
猫を飼うのははじめてだったという井上さんと外山さん。運命的な出会いを経て、どんこちゃんは晴れて家族の一員となった。どの家でも自分の居場所のようにくつろげるというどんこちゃんは新居にもすぐ慣れたという。取材中も部屋を歩いたり机の上に寝転んでインタビューを聞いていたりとマイペースに過ごしていた。
「お客さんのことが好きで、来客中もずっとウロウロしているんですよね。はじめて飼う猫なのであまり猫のことを分かっていなかったんですけど、よその子を預かったりすると、どんこは動きがどんくさいなって思います(笑)」(井上さん)
ものが少なくすっきりとした部屋は、猫にとっても過ごしやすそう。外山さんはあまりものを置きたくない派なのだとか。
「引越す前からものが少ないとは言われていたんですけど、引越し後もさらに減らしていきました。外山さんはもともと本を集めるのが趣味でレアな本や写真集が並んでいたんですけど、全部売ってしまったんです」(井上さん)
「なるべくものを増やしたくないので、本も読んだら捨てる。たくさん並べていても自慢しているだけになってしまうというか。結局出して見ないし、それだったら意味ないなと思って。音楽もCDでは一切買わずデータです。あと、掃除に時間をかけるのが無駄だなと思ったんです」(外山さん)
スッキリとした空間には、ちょっとした猫への配慮も
「棚の上にガラス製のものを置いていたときはよく落とされていたので、全部中段に入れたんですよ。どんくさいせいか、中段に入ることはできないみたいで、割られることはなくなりましたね。割れるものや小さいものは買わなくなりました」(井上さん)
「一人掛けのソファはもともとファブリックだったんですけど、友達の猫を預かったときに爪とぎをしてしまうので革に張り替えたんですよ。床の円形クッションはなぜ中途半端なところに置いているかというと、どんこが机から飛び降りたときに足が痛くないようにと思って置いたんです。けれど、実際は人間が気遣いをしてもそうではないところに降りるから意味ないんですけどね(笑)。あと、どんこはティッシュを食べてしまうので、友達がつくってくれたふたつきのティッシュケースを使っています」(外山さん)
「特に、猫のために何かをやっているわけではない」という部屋は、時とともに自然と、人間も猫も居心地がいい空間になっていっているようだ。どんこちゃんと暮らして7年。いまや雑誌のカバーを飾り、カレンダーも発売されるなどスター猫となったどんこちゃん。「どんこちゃんに会いたい!」と家を訪ねてくれる人も増えたのだとか。スター猫の飼い主と聞くとさぞ猫好きだろうと思いきや……。
「僕たちすごく猫好きに思われるんですけど、特別に動物が好きなわけじゃないんですよね(笑)。ほかの猫にわざわざ会いに行くこともないし」(外山さん)
「そうなんです。どんこが好きなだけなんです(笑)」(井上さん)
本当に必要なものと暮らす、無駄のないシンプルでコンパクトな暮らし。それはとても豊かな空間と暮らしだった。
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