国土交通省の令和6年度予算要求、住宅施策は何が変わる?施策概要を解説

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国土交通省が令和6年度予算の概算要求の概要を公表した。まだ要求した段階で決定したものではないが、国土交通省がどんなことに力を入れようとしているのかが分かる。その中から、住宅に関することをピックアップして、見ていくこととしよう。
【今週の住活トピック】
令和6年度予算概算要求概要等を公表/国土交通省

新築・既存住宅の省エネ化の推進や中古住宅流通・リフォーム市場の活性化などに予算を充てる

国土交通省の令和6年度の予算では、(1)「国民の安全・安心の確保」、(2)「持続的な経済成長の実現」、(3)「個性をいかした地域づくりと分散型国づくり」に重点を置いている。

(1)「国民の安全・安心の確保」では、自然災害の激甚化・頻発化に対応する強靭な国土づくりを掲げている。住宅関連について見ると、以前から行っている「密集市街地対策や住宅・建築物の耐震化」や近年多く発生している土砂崩れの要因ともなる「盛土の安全確保対策」を推進するとしている。

(2)「持続的な経済成長の実現」における住宅関連の主眼は、「ZEH・ZEBの普及や木材活用、ストックの省エネ化など住宅・建築物の省エネ対策等の強化」となる。また、住宅にも関係がある、建設業の「2024年問題※」の解決に向けた支援をするとしている。
※2024年4月から時間外労働の上限規制が建設業に適用されることで、さまざまな影響が生じること

(3)「個性をいかした地域づくりと分散型国づくり」では、「多様な世帯が安心して暮らせる住宅セーフティネット機能の強化」や「既存住宅流通・リフォーム市場の活性化」が住宅関連の項目と言えるだろう。加えて、「空き家対策、所有者不明土地等対策及び適正な土地利用等の促進」や「地方への人の流れを創出する移住等の促進」もテーマに掲げている。

また、岸田政権はこども・子育て政策に力を入れていることから、「こどもまんなかまちづくり」を推進するとして、「子育て世帯等に対する住宅支援の強化」や「通学路等の交通安全対策の推進」にも予算を充てるとしている。

こども・子育てへの支援内容とは?

次に、具体的な支援内容について、国土交通省住宅局の予算概算要求概要で見ていこう。詳しく見ると、おおむね継続または拡充となっているので、2023年度の支援策が2024年度にも継続され、一部の内容が見直されるということになりそうだ。

子育て世帯等に対する住宅取得支援の強化としては、「【フラット35】の金利引き下げ」が挙がっている。これは、【フラット35】のなかでも、「【フラット35】地域連携型」によるもの。地域連携型とは、地方公共団体がそれぞれ該当する住宅取得に関する補助金などの財政的支援を行っている場合に、併せて【フラット35】の金利を引き下げるもの。つまり前提として、地方公共団体が子育て支援策を設けている場合に限られる。残念ながら東京都は、首都圏でも神奈川県や千葉県に比べると子育て支援をしている区市が少なく、2023年4月時点の資料によると、台東区、墨田区、福生市、多摩市、奥多摩町となっている。

【フラット35】の金利引き下げ制度については、2023年4月に見直しが図られた。地域連携型で「子育て支援」と「空き家対策」については、返済当初10年間、0.25%の金利を引き下げる形になっている。また、【フラット35】地方移住支援型では、当初10年間、0.3%の金利引き下げとなる。省エネ性の高い住宅の場合に金利を引き下げる「【フラット35】S」などと組み合わせると、さらに金利が引き下げられる仕組みだ。これらは、2023年度の制度なので、2024年度も予算をつけて継続すると考えられる。金利の引き下げ幅については、2024年度でどうなるか見守りたい。

また、「子育て支援型共同住宅推進事業」という補助制度もある。マンションなどの共同住宅で、子どもの安全・安心や快適な子育て等に配慮した改修などを行った場合に補助金を出す事業だ。今住んでいる分譲マンションの住戸で、子育て中の区分所有者などが、条件に該当するリフォームを行うと、2023年度の場合は、補助対象事業費の3分の1までで上限100万円の補助金が交付される。2024年度は、この補助制度を拡充する予算を要求している。

子育て支援型共同住宅推進事業の拡充を要求(現行制度の概要)/令和6年度「住宅局関係予算概要要求概要:国土交通省住宅局」より抜粋

子育て支援型共同住宅推進事業の拡充を要求(現行制度の概要)/令和6年度「住宅局関係予算概算要求概要:国土交通省住宅局」より抜粋

住宅のリフォームへの支援策とは?

住宅のリフォームに関する補助金の制度もいくつかある。省エネリフォームや長期優良住宅化リフォームについての支援制度などだ。

たとえば「住宅エコリフォーム推進事業」では、省エネ診断や省エネ設計、省エネ改修(または建て替え)の費用に対して、上限枠まで補助金が交付される。2023年度の事業では、省エネ基準適合レベルなら30万円(交付対象費用の4割まで)、ZEHレベルなら70万円(交付対象費用の8割まで)を限度に補助金が交付されるものだったが、すでに予算枠に達してしまい受付を終了している。2024年度の予算要求では拡充となっているので、より多くの件数に対応できるように予算枠を増やす考えなのだろう。

また、「長期優良住宅化リフォーム推進事業」では、所定のリフォームを行った場合に、工事費用の3分の1を限度に、100万円(長期優良住宅(増改築)認定を取得する場合は200万円)まで補助金が交付される。ただし、若者・子育て世帯が工事を実施する場合や既存住宅を購入して工事を実施する場合などでは上限額が50万円加算される。この事業については、2024年度に継続する予算要求をしている。

長期優良住宅化リフォーム推進事業の継続を要求(現行制度の概要)

長期優良住宅化リフォーム推進事業の継続を要求(現行制度の概要)

対象が限られたり、申請や受領が事業者となったりするものも含めて、補助金などの支援策はほかにも数多くあり、継続や延長、拡充などの予算要求がされている。

なお、令和6年度予算概算要求概要の公表と同時に、令和6年度国土交通省税制改正要望事項についても公表されている。税制改正要望についても、期限切れを迎える減税制度の延長が多いが、住宅のリフォームに関する減税制度で、現行の「耐震」「バリアフリー」「省エネ」「三世代同居」「長期優良住宅化」のリフォームに加え、「子育て対応」に関するリフォームを加えるように要望している。

2024年度のこども・子育て政策については、目新しいものはないが、地道に予算や税制の要望をしているという印象を受けた。

引用元: suumo.jp/journal