【今週の住活トピック】
「 第1回 空き家所有者に関する全国動向調査(2021年)」結果を公表/カチタス
空き家所有者の76.8%は「相続登記の義務化」を知らない
「相続登記」とは、相続により不動産を取得したときに、不動産名義を相続人に変更すること。一見当たり前のことのようだが、これまでは義務ではなく任意だったので、すぐに活用しない場合などでは相続登記をしないということが行われてきたのだ。
カチタスが空き家所有者に、相続登記の義務化を知っているか聞いたところ、「知っている」は23.2%しかおらず、「知らない」という人が大半だった。
では、空き家の相続について家族と話しているか聞いたところ、「家族と話していない」人が66.7%だった。空き家の登記情報や相続後の使用もしくは処分方法についてあいまいなままで相続となると、残る家族に迷惑がかかることもあるので、空き家をどうするかを家族できちんと話し合っておきたいところだ。
所有者不明の土地をなくしていくための対策
ではなぜ、相続登記が義務化されるのだろう?
空き家が管理されずに放置されることで、近隣トラブルや衛生上、防犯上などさまざまな問題を引き起こす「空き家問題」が話題になった。政府は、こうした迷惑空き家に対して、2014月11月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空家対策特別措置法)を成立させ、私有財産である住宅に行政が関与できるような対策を取った。
一方で、放置された空き家や土地に対して管理を求めたり処分したりしようするときに、所有者が分からないという問題も浮き彫りになった。何代にもわたって相続登記がなされていないと、まずは最後の名義人からその相続人たちを探し出し、その相続人たちが他界していれば次の代に相続権が引き継がれるので、さらに次の代を探し……と、その土地の相続人の数がねずみ算式に膨れ上がる。放置された土地の所有者を探すために多大な時間と費用が掛かることに加え、土地を活用しようとした場合に相続人全員の合意を得るのは至難の業だ。
2017年に「所有者不明土地問題研究会」から最終報告が出されたが、そこには、「2016年時点の所有者不明土地の面積は約410万haで、九州本土の面積の約367万haをすでに上回る」という、衝撃的なデータが紹介された。その最終報告では、相続登記の義務化を含む、すべての土地の所有者が明らかになるための施策や、活用されない土地を手放す仕組みをつくることなどが提言された。
こうした提言を受けて、政府は対策に着手し、不動産登記法の改正、民法等の改正、相続土地国庫帰属法の新法制定などを行ったのだ。
法改正などによりどう変わる?何をしなければならない?
では、法改正などによって何が変わるのだろう?不動産の相続や登記などが、主に次のように大きく変わることになる。
(1) 相続登記の義務化
不動産を取得した相続人は、そのことを知った日から3年以内に相続登記を行うことが義務づけられる。正当な理由がないのにこれを怠った場合は罰則(過料10万円以下)がある。ただし、登記手続きの手間や費用を軽減するなどの措置も取られる。
(2) 住所等変更登記の義務化
登記をした名義人は、住所や氏名などの変更日から2年以内にその変更登記を行うことが義務付けられる。正当な理由がないのにこれを怠った場合は罰則(過料5万円以下)がある。
(3) 土地の所有権を放棄しやすい仕組み
相続したものの土地を手放したい場合は、一定の要件(建物が立っていない、土壌汚染がない、権利関係に争いがないなど)を満たせば、国庫に返納できる。ただし、審査手数料や10年分の管理料などを負担する。
このほかにも、管理不全や所有者不明の土地・建物について、裁判所が管理人を選任して管理させたり、その土地に不明な共有者がいる場合は残りの共有者で管理できるようにしたりなど、土地の利用を図る方策も取られている。
2021年4月28日に公布されたこれらの法改正等は、原則として公布日から2年以内に施行されるが、相続登記の義務化は公布日から3年以内、住所等変更登記の義務化は公布日から5年以内に施行される予定となっている。
空き家を所有している人、今後に土地や住宅の相続が想定される人などは、相続登記の義務化などを視野に入れ、今から準備をしておくのがよいだろう。その際には家族で話し合ったり、その土地や住宅についてこれまでの経緯を知っている人から情報を集めたりすることも忘れずに。
「 第1回 空き家所有者に関する全国動向調査(2021年)」結果を公表/カチタス