『大豆田とわ子』が社長を務める「しろくまハウジング」はリアリティ満載!監…

『大豆田とわ子』が社長を務める「しろくまハウジング」はリアリティ満載!監修の専門家に聞いた

(画像提供:関西テレビ)

各テレビ局の2021年春のドラマがスタートした。その中で注目したいのが『大豆田とわ子と三人の元夫』だ。注目した理由は、松たか子さんが演じる大豆田とわ子の仕事にある。住宅建設会社の社長というからには、ドラマの中で建設関係の話題がてんこ盛り。そこで、ドラマ制作の裏情報を聞いてきた。

専門家による「建築監修」でリアリティ満載

『大豆田とわ子と三人の元夫』の主人公・大豆田とわ子は、しろくまハウジングの社長に就任したばかりのバツ3女性。ひょんなことから三人の元夫たちと顔を合わせることになり、三人に振り回されながらも幸せを求めて奮闘するという物語だ。並行して、それぞれに新しい恋の(あるいはトラブルの)兆しもあって、先が読めないドラマになっている。

さて、ドラマのストーリーは別として、注目はしろくまハウジングのことだ。医療ドラマには医師が監修に当たるように、しろくまハウジングにも建築士の監修がいた。建築士の上田真路さんが代表取締役を務めるKUROFUNE Design Holdingsだ。

上田さんに、具体的にどういったことに関わっているのかを聞いた。

しろくまハウジングは“こだわりの注文住宅”で一目置かれているデザイン系建設会社。第1話では、「法規の読み違い」というトラブルが起きる。法規にかなうように、徹夜で設計を修正する大豆田とわ子。優秀な建築士であることが分かるシーンだ。

設計の変更についてスタッフに説明するシーン(第1話より)(画像提供:関西テレビ)

設計の変更についてスタッフに説明するシーン(第1話より)(画像提供:関西テレビ)

番組プロデューサーの要望に応じて、住宅の設計時にどんなトラブルが起こりうるか、上田さんが情報提供をした例のひとつだ。第1話で起きたトラブルは、「第2種高度地区ではなく、実は第1種高度地区だった」というもの。第2種より第1種のほうが規制は厳しいので、第2種が前提で設計した建築物では建築の許可が得られないことになる。そこで、急遽、第1種の規制に合うように設計変更をする必要があるわけだ。

市街地の土地などには、都市計画法でそれぞれの土地に定められた建物の用途制限があり、これを“用途地域”という。主に住居系、商業系、工業系などに分かれ、例えば交通量の多い工場地帯に住宅が混在しないような規制をしている。重ねて、自治体ごとに、北側の隣地などに圧迫感をなくして日照などを確保するために“高度地区”を定めている。建築物を建てるにはこうした細かい法規制をクリアする必要があるのだ。

専門用語が飛び交うので、脚本にも上田さんの助言が反映される。大豆田とわ子は、自ら設計を変更した図面と模型をスタッフに見せながら、「北側の厳しい斜線制限がかかる側はボリュームを削減しました。3階のベッドルームはロフト部屋に変更して、代わりに広めのテラスを設置しました」と説明する。“斜線制限”とは、隣地の日照などを確保するために建物の高さだけでなく、建物上部の形状にも制限を設けるもの。斜線制限で3階にベッドルームをつくれなくなったので、2階の居室の天井を高くして、その居室の一部を2層式にしてロフトにすることで、制限をクリアしたのだ。全体の居住空間が減ってしまったので、庭に広めのテラスを設置して、部屋の延長空間として活用してもらおうという、使い勝手を考えた提案だ(と筆者は解釈している)。

このように、仕事の上でのトラブルを乗り切るドラマの展開において、専門知識の裏付けや専門用語を使った台詞が必要になるので、プロの監修が求められるのだ。脚本をつくる段階から関わるだけでなく、ドラマの展開に沿って、しろくまハウジングの作品として登場する建築物の設計図面やパース、模型などもKUROFUNE Design Holdingsで提供している。

しろくまハウジングが手掛ける大学図書館の図面とパースもKUROFUNEで提供した(第3話より)(画像提供:関西テレビ)

しろくまハウジングが手掛ける大学図書館の図面とパースもKUROFUNEで提供した(第3話より)(画像提供:関西テレビ)

第3話の大学図書館の設計について、若手建築士の仲島登火(神尾楓珠さん)が素晴らしいデザインを提案する。そのデザインを見てとわ子は、「スイチョクカジュウとスイヘイタイリョクをこのタイリョクヘキとハシラで支えるのか」と言う。多くの視聴者にとってはなんのこっちゃ?という台詞だが、建築に多少でも関わった視聴者なら「垂直荷重と水平耐力をこの耐力壁と柱で支えるのか」と漢字で聞き取ることができる。医療ドラマなら「なんのこっちゃ?」側の筆者も、このドラマなら「ふむふむ」側になるので、なんとなくうれしい。

さて、ドラマのほうでは、このデザインでは予算に収まらないという難題が勃発する。そのため、社長と設計部の間で気まずい雰囲気が漂い、とわ子は悪戦苦闘することになる。

製図の引き方から席の配置まで、プロが見ても納得感のあるドラマに

建築物に関する提供だけではない。第1話と第3話には、とわ子に扮する松たか子さんが図面を引くシーンがある。最近はCAD(コンピューターを使った設計を支援するツール)で設計するのが主流だが、とわ子は手で図面を描いている。筆者は建築については専門ではないので知らなかったのだが、製図で線を引くときには少しくるくる回るように描くのだそうだ。上田さんは、撮影現場に立ち会ってこうした演技指導もしている。松たか子さんは呑み込みが早かったそうだ。

ドラマでは松たか子さんが図面を引くシーンも多い(画像提供:関西テレビ)

ドラマでは松たか子さんが図面を引くシーンも多い(画像提供:関西テレビ)

ほかにも、第1話で住宅地のプロジェクトで設計部の三上頼知(弓削智久さん)が、模型を指さしながら説明するシーンがあったが、その手の動きなどにも演技指導が入っている。上田さんは「建築のプロが見ても違和感がないようにしている」という。

プロジェクトのデザインについての説明を受けるシーン(第1話より)(画像提供:関西テレビ)

プロジェクトのデザインについての説明を受けるシーン(第1話より)(画像提供:関西テレビ)

また、上田さんは、しろくまハウジングのオフィスのつくり方にも助言をしている。フロアの一段高いところに社長の席がある、おしゃれなオフィスなのだが、社長とスタッフの距離などにも配慮がなされている。

例えば、社長の席の近くに営業部署を置き、次いでインテリア部署や設計部署があり、遠い席に見積もりをする積算部署や経理部署があるという具合だ。それぞれの部署に応じて、壁材や床材のサンプルを置き、すぐに打ち合わせができるように大きなテーブルを置くなど、見た目では気づかないような細かい配慮もされているのだ。

しろくまハウジングのオフィスの様子(第3話より)(画像提供:関西テレビ)

しろくまハウジングのオフィスの様子(第3話より)(画像提供:関西テレビ)

余談になるが、上田さんによると、建築士は黒か白の洋服を着ることが多いという。デザインが主役となるように建築家自身はシンプルに見せるということと、建築現場は汚れやすいので汚れが目立ちにくい服を着ることが関係しているのではないかと。それを聞いてドラマを見直すと、さすがに主役の大豆田とわ子の衣装は、白や黒ではなくカラフルなものだが、設計部署の三上や登火などは黒い服を着ていたので、上田さんの情報提供が活かされているのかもしれない。

ドラマ本編はいよいよ佳境に

さて、ドラマを楽しむには、建築の専門用語が分からなくても全く問題はない。しかし、実はこうした専門知識の裏付けがあるといったことが分かると、違う面白さも加わるのではないか。

このドラマをきっかけに建築に興味を持ってくれる人たちが増えて、その中から世界的に活躍する建築士が誕生するかもしれないと思うと、ワクワクする。もちろん、とわ子が元夫の誰かと元鞘に収まるのか、はたまたこれから新たなパートナーが登場するのか、ドラマ本編の展開も楽しみたいと思う。

●取材協力
KUROFUNE Design Holdings
プレスリリース
関西テレビ
番組HP

引用元: suumo.jp/journal

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