「2019年度 フラット35利用者調査」を公表/住宅金融支援機構
【フラット35】の金利は7・8月で僅かに上昇
まず、【フラット35】についておさらいしておこう。
住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して、ユーザーに提供している住宅ローンで、35年などの長期間にわたって金利が変わらないのが特徴だ。提携先の民間金融機関によって、実際に借りるときに適用される金利や融資手数料が異なることに留意したい。
2020年8月の金利を見ると、借入期間21年以上35年以下(融資率9割以下)の最頻金利で、1.31%となっている。7月は1.30%、6月は1.29%だったので、2カ月続けて0.01%ずつ上昇したことになる。そうはいっても、ここ5カ月は1.30%前後で推移しているので、超低金利であることに変わりはない。
コロナ禍の影響を受け、【フラット35】も2020年4月~6月の利用申請戸数が2万7501戸、対前年期比89%と減少している。住宅事業者が緊急事態宣言下で営業を自粛したことが大きな要因だろう。
所要資金、年収倍率、住宅面積で【フラット35】利用者にわずかな違い
さて、2019年度の【フラット35】利用者の調査結果が公表された。
【フラット35】を利用したのは、「注文住宅(土地の同時取得ありも含む)」41.9%、「新築分譲建売住宅」24.1%、「中古マンション」13.8%、「新築分譲マンション」10.4%、「中古一戸建て」9.9%の順となっている。利用者の平均年齢は40.2歳、平均世帯年収は607万円だ。
注目したいのは、まず、所要資金※の増加傾向が続いていることだ。
※所要資金:注文住宅は予定建設費、土地付注文住宅は予定建設費+土地取得費、新築および中古住宅は購入価格
【フラット35】利用者の所要資金が最も高いのは、近年の価格上昇の影響を受けた新築マンションで、年々増加を続けている。その新築マンションに引っ張られるように、中古マンションも増加を続け、加えて、土地付注文住宅と注文住宅も増加を続けている。一方、新築の建売住宅の所要資金は、安定しているのが大きな特徴だ。
所要資金が増加しているのに対して、世帯年収の平均額はそれほど上昇していないことから、所要資金に対する世帯年収の割合(年収倍率=所要資金/世帯年収)が上昇している。
年収倍率が最も高いのは「土地付注文住宅」の7.3倍。次いで、新築マンションの7.1倍となる。所要資金の場合と順位が入れ替わるのは、新築マンションでは都心部での供給が多いこともあって、世帯年収の平均が763万円と最も高いのに対し、土地付注文住宅の平均が628万円と新築マンションより低いことにある。一方、年収倍率が低いのは、中古住宅(マンション・一戸建て)だが、それでも5倍を超える倍率となっている。
所要資金も年収倍率も増加を続けているが、減少しているものもある。それは「住宅面積」だ。
全体的に横ばいの傾向にあるが、注文住宅、土地付注文住宅、新築マンションでは前年より住宅面積が縮小している。また、一戸建て系とマンション系で、住宅面積に大きな開きがあることも分かる。
中古住宅の築年数は年々高経年化する傾向
次に、中古住宅に注目して見ていこう。【フラット35】利用者が購入した中古住宅では、平均築年数の高経年化(長期化)が進んでいる。
中古一戸建ての2019年度の平均築年数は19.6年。築21年以上の割合は全体の46.7%を占める。2011年度(平均築年数15.6年)以降9年続けて高経年化している。
中古マンションの平均築年数は中古一戸建てよりさらに長い23.7年。築21年以上の割合は全体の56.3%を占める。こちらも2011年度(平均築年数15.0年)以降9年続けて高経年化している。
マンションに比べると一戸建てのほうが建物の寿命は短いが、住宅の性能が上がっていき、リノベーションの技術も向上していることから、高経年化したものも流通するようになっているので、今後も高経年化が続くのではないかと思われる。
申請戸数の減少に見られるように、コロナ禍は住宅取得においても影を落としている。低金利はまだしばらく続くと思うが、世帯年収の変動が懸念される。無理な住宅ローンを組む時代ではないので、予算や希望条件の見直しなどが行われる可能性もあるだろう。マイホームを取得する人がどういった選択をするのか、注目していきたい。