子どものころから家好きで既に住宅購入4回、20代で一戸建て購入
――著書『35歳、働き女子よ城を持て!』では、高殿さんが編集担当のM村さんに強く住宅購入をオススメされていますね。かなり不動産にお詳しいようですが?
SUUMO、いつも見ています(笑)。子どものころから不動産に人一倍興味があったので、今も趣味のように時間が空けば物件情報検索していて、間取図を見るのが大好きです。生まれた時は社宅住まいで、母親がマイホームを夢見ていつも間取りチラシをチェックしていた影響でしょうか。3歳で社宅から郊外のニュータウンに引越したのですが、その時のこともはっきり覚えています。
その後も親の都合で引越しを繰り返し、さらに阪神淡路大震災もあって。住んでいたマンションは幸い無事でしたが、ライフラインが復旧するまでは友人宅で過ごし、旧い街並みが壊れ、やがて高層マンションに変わっていく様を目の当たりにして、ますます住宅について考えさせられました。
――ご実家を出られてからのご自身の住まい歴を教えてください。
就職先が大阪で、距離的に通うことが難しいため実家を出ました。初めて借りた部屋は友人とのルームシェアで広めのファミリータイプ。ワンルームを一人で借りるより快適だと思って。その後賃貸は合計3軒、その間に結婚もしたので、27歳の時に建売の一戸建てを購入しました。賃料を払い続けても何も残らないけれど、ローンを払えば土地は残ると思って。土地は担保にもなりますし、古くならないし、マンションでも土地の持ち分はありますしね。
――この時の家選びのポイントやこだわりは?
こだわりは利便性です。都心でしかも駅から徒歩30秒という便利さで、どこへ行くにもアクセス抜群。作家になって3カ月に1冊本を出す生活で、とにかく時間に追われていて。この家もたまたま契約済だったのにローンが通らず空いていた、ということにご縁を感じました。利便性重視の反面、国道もあるためうるさく、狭小地の建売で物理的に狭いという課題もありました。一度不動産を買うと「次はもっと……」と不満を解消したくなり、どんどん購入をライトに考えられるようになりましたね。
親のためのマンション購入後、自然素材を使った念願の注文住宅を建てる
――不動産購入がライトになって、実際に買われた物件とその理由を教えてください。
31歳で、親のために新築マンションを購入しました。この時のこだわりは立地。親も高齢になって病院通いもあるので、県立病院にも私たちの住まいにも近い都心の立地が魅力でした。仕事が忙しい中、子どもの世話も頼めますし、とても助かりました。
気に入っている一方で、マンションというものは管理費や修繕積立金、管理組合の運営などが大変、ということも学びましたね。その後、36歳で念願の注文一戸建て。前が建売だったので、いつかは土地を買ってこだわりの一戸建てをと思っていて、子どもの校区が変わらないよう小学校入学前のタイミングで。以前は利便性重視で都心でしたが、のんびりした子なのでゆっくりできる環境の土地を選び、自然素材の家を建てて、35年ローンで支払っています。さらに、35歳で投資用マンションを五反田(東京)に購入。こちらは賃貸にしていましたが、距離があるので今は売却して身近な関西圏で投資用物件を探しています。
――今お住まいの注文住宅のこだわりポイントは? 住み心地はいかがですか?
前の建売一戸建ての課題を全て解決しました。仕事柄本が多く、収納に困っていたため、壁には天井まで本棚を造作。掃除好きなので、基本的に見せる収納でオープンな空間にしつつ、家事動線にも配慮。また、私自身がアトピー持ちということもあり、土壁や珪藻土といった自然素材を使ってもらいました。建築時にSUUMOの雑誌『注文住宅』にも取材されたりして、家族や友人にも好評です。何よりありがたいのは、ここに住んでからぜんそくが治ったこと。珪藻土のおかげかな、と思っています。
家は働く女性を裏切らない! じっと帰りを待って、褒めて、癒やしてくれる
――家が高殿さんを幸せにしていることを実感します。今回の新刊エッセイのテーマを家にしようと思ったのも、その理由ですか?
最近「家が欲しい」という声をよく聞きます。周囲の既婚者はたいがい家持ちですが、シングル女子は、まだまだこれから。「女性活躍」などと言われ忙しく働いていても、20年前の自分たちの時代よりお給料は下がっているのが現実。
女性の生き方も多様化して「旦那もいらない」「子どももいらない」など身軽になっていますが、家は必要。いざ購入となるとどう動いていいか分からなくて、友人にも話しにくいから相談相手もいないし、セミナーなどに一人で行くのは抵抗がある。会社員ならローンが組みやすいけれど、契約社員や私のようなフリーランスだとそこもハードルになる。私が実体験や体当たり取材をもとに発見したことを身の回りの友人知人に伝えるだけでなく、もっと多くの若い人に知ってもらいたい。不動産をはじめとした、税金についての知識は、あればあるほど得をするから、学校の義務教育で教えるべき、と思うくらいです。
――最後に、働くシングル女子にエールをお願いいたします。
持ち家は働く女性を裏切りません。男性や友人に裏切られることがあっても、仕事が期待どおりに進まないことがあっても、家はじっと帰りを待って、頑張っているあなたを毎日継続的に褒めてくれます。大人になると、親も褒めてくれないのにね。女子が生きていくために大切なのは、自分だけのくつろげる居場所(=資産)を見つけること。持ち家によって自分に自信がつき、癒やされ、支えになり、暮らしが激変したたくさんの成功例を見ています。全ての女性が「ラク」に生きる手助けができれば幸いです。
時代先取りのルームシェアから憧れの注文住宅に至る高殿さんご自身の住宅歴を根掘り葉掘り伺い、インタビューは女子会のごとく大盛り上がり。「家は裏切らない」「いつもお帰りなさいと癒やしてくれる」というお言葉に大きくうなずく編集部T(目黒にマンション購入)と筆者(鎌倉で古民家リノベ―ション)のシングル女子2名。はい、家、褒めてくれます!!
高殿 円(たかどの・まどか)
兵庫県生まれ。2000年『マグダミリア三つの星』で第4回角川学園小説大賞奨励賞を受賞しデビュー。13年『カミングアウト』で第1回エキナカ書店大賞を受賞。主な著作に「トッカン」シリーズ、「上流階級 富久丸百貨店外商部」シリーズ、「カーリー」シリーズ、『メサイア 警備局特別公安五係』『シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱』『剣と紅 戦国の女領主・井伊直虎』『主君 井伊の赤鬼・直政伝』『政略結婚』『ポスドク!』など。漫画原作も多数。
@takadonomadoka