住宅購入はじっくりと。増税前に購入したいと考えた人は昨年より大幅ダウン

住宅購入はじっくりと。増税前に購入したいと考えた人は昨年より大幅ダウン

(画像提供/PIXTA)

リクルート住まいカンパニーの「2019年注文住宅動向・トレンド調査」によると、消費税率10%への増税の影響で、増税前に家を建てたいという人は少なかったという。一方で、防災については意識が高かったようなのだが、どんな家を建てようとしているのだろうか?
【今週の住活トピック】
「2019年 注文住宅動向・トレンド調査」を発表/リクルート住まいカンパニー

住宅は「増税に関係なくゆっくり考えるもの」

同社の調査は、注文住宅の建築者(1年以内に注文住宅を建築した1884人)および検討者(今後2年以内に注文住宅の建築を検討している1880人)を調査対象にしている。

まず、注文住宅の建築者の結果を見ると、建築費用の平均は、全国で2902万円(前年より95万円増)、このうち首都圏では3034万円(前年より50万円増)だった。
また、家づくりを考えたきっかけ(複数回答)は、「いつかは一戸建てに住みたいと思っていた」(25.5%)、「子どもが誕生した」(25.2%)、「結婚」(22.4%)がTOP3で、「消費税が上がる前に建てたいと思った」は24番目のわずか3.1%だった。

次に、検討者に消費税増税の影響を聞いた結果を見ると、消費税増税前に建築を「間に合わせたい」と回答した人は30.8%で前年より36.7ポイントも減少していた。

増税前における住宅建築意向(検討者・全国)(出典:リクルート住まいカンパニー「2019年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

増税前における住宅建築意向(検討者・全国)(出典:リクルート住まいカンパニー「2019年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

さらに、増税前の住宅建築に「こだわりがない」と回答した51.3%の人に、こだわらない理由(複数回答)を聞いたところ、「増税に関係なくゆっくり考えるもの」という回答が65.3%と圧倒的に多かった。

増税が建築に関係しなかった理由(検討者・全国)(出典:リクルート住まいカンパニー「2019年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

増税が建築に関係しなかった理由(検討者・全国)(出典:リクルート住まいカンパニー「2019年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

消費税率が上がる度に注目される「駆け込み行動」ではあるが、今回の調査結果を見ると消費者は比較的冷静に行動したことがうかがえる結果となった。本来住宅は、必要とする時期に、希望の条件にそってきちんと建てるべきものだ。繰り返される増税で、消費者も賢い判断をしているといってよいだろう。

高まる、住宅の防災意識

最近は、地震だけでなく、台風による被害なども続いているが、防災に対する意識はどうなっているのだろう?

注文住宅の建築者に聞いた結果を見ると、建築にあたり防災を「意識していた」という回答は70.1%(「かなり意識していた」23.8%+「意識していた」46.2%の合計)と高く、検討者では83.4%(32.6%+50.9%)とさらに高くなることが分かった。

防災を意識した人に、具体的な対策を聞くと(複数回答)、「地震に強い地盤」や「地震に強い構造」など地震対策が半数を超えた。ただし、調査時期が台風15号による被災を受ける前であることから、水害や風害への意識は調査時期より高まっていることが考えられる。

■防災に関する対策(建築者・検討者)(出典:リクルート住まいカンパニー「2019年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

■防災に関する対策(建築者・検討者)(出典:リクルート住まいカンパニー「2019年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

パワーカップルは立地へのこだわりも強い?

今回の調査では、近年、住宅取得の層として注目されている共働き世帯についても分析している。「夫・妻のいずれも年収が400万円以上」かつ「世帯年収が1000万円以上」を『パワーカップル』と定義し、そうでない既婚層と比較検討している。

筆者が気になったのは、パワーカップルの高い資金力はどこに向けられるかだ。どうやら、結果を見る限りは「立地へのこだわり」に向かっているようだ。詳しく説明しよう。

■注文住宅を選んだ決め手の上位TOP2(建築者※注文住宅以外の住宅タイプも検討した者・全国)
1位:設備や間取りが好きなように選べるから
パワーカップル(59.0%)VSパワーカップル以外(74.8%)
2位:自分の好きな場所に建てることができるから
パワーカップル(50.2%)VSパワーカップル以外(45.1%)

■パワーカップルが建築エリアでより重視する条件TOP2(建築者※新規土地取得して注文住宅を建てた者・全国)
差分+18.7:保育園に入りやすい自治体である
パワーカップル(30.5%)VSパワーカップル以外(11.8%)
差分+13.3:最寄駅からの距離が近い(自宅から10分圏内)
パワーカップル(41.5%)VSパワーカップル以外(28.2%)
※【差分】=(パワーカップル)-(パワーカップル以外)

注文住宅以外の住宅タイプの検討した結果、最終的に注文住宅を選んだ人で見ると、パワーカップルの場合は注文住宅の特徴である「設備や間取りの自由度」と同じくらいに、「立地の自由度」を重視したことが分かる。また、今ある家を建て替えて注文住宅を建築したのではなく、土地の取得も行った場合は、立地選びをすることになるが、共働きゆえに、「保育園の確保」や「最寄駅から10分以内」などの交通アクセスも重視している点も、パワーカップルの大きな特徴だ。

ほかにも、車の保有管理やペットと暮らすことを決め手にしたり、防犯仕様の充実やZEHなどを重視していたりなどの違いが見られた。こうした付加価値にも資金力が向かうということか。

近年、土地を新たに取得してそのうえで注文住宅を建てる人が増えている。調査結果でも「土地なし」は増加傾向にあり、今回は71.3%に達した。つまり、既成の住宅にはあきたらず、立地も間取りも自由に選びたいという、住宅にこだわりのある人が注文住宅を選んでいると見てよいだろう。

自分のライフスタイルに応じた住まいを手に入れるという本来の目的から考えると、立地にも間取りにもこだわるというのは、理にかなった考え方かもしれない。

引用元: suumo.jp/journal