「わが子に一言」「親に一言」をテーマにした川柳募集企画の審査結果発表/東京土地家屋調査士会
川柳を募集したのは、東京土地家屋調査士会。その理由とは?
◆ 大事です お父さんより 不動産
入賞作の中で筆者がまず注目したのはこの川柳。誰しもこうは言われたくないものだが、なぜかこうした場合にお母さんはあまり登場せず、お父さんばかりが劣勢になるものだ。「さん」と「産」が韻を踏んでいる点もよいと思う。
さて、同会が川柳を募集した背景には、「相続した土地の境界線があいまいで近隣トラブルで困っている」といった相談があるからだという。川柳を通して、普段話すことのない親子間の本音を伝えてもらおうと、「わが子に一言」または「親に一言」をテーマにした川柳を募集したところ、2236句集まった。その中から20句を入賞作品に選んでいる。
そのため、以下のような入賞作品もある。
◆ 遺さない 隣家トラブル わだかまり
◆ 遺す土地 調査と税は 子の仕事
相続した家が空き家になる場合の川柳もある。
◆ 我が空き家 昔は財産 今負債
近隣トラブルの原因となる「土地の境界」の川柳も
ところで、「土地家屋調査士」とは、何をする専門家かご存じだろうか?
土地家屋調査士とは、調査や測量をし、不動産の登記を行う資格を持つ。登記を行う専門家には、ほかに司法書士もいる。司法書士は、不動産の売買や相続の際に所有権などの「権利に関する登記」を行う。
これに対し、土地家屋調査士は、その前提となる「表示に関する登記」を行う。土地や家屋の場所を特定し、用途や規模、広さなどの詳細を登記するほか、建物の新築・増築や解体、土地の一部を分割した場合にも登記簿に反映させる手続きをする。そのため、正確な境界を調査したり、測量をしたりする業務も伴うわけだ。
土地の境界の重要性を指摘する川柳もある。
◆ LINEより 土地のラインを 気にしなよ
◆ 変わる世に 変わらぬ杭の ありがたみ
土地の境界を示すためには、目印となる境界標が必要だ。境界線の折れる点に境界標を設置することで、点と点を結んだライン(線)の中が自分の土地だとわかる仕組みになっている。この境界標として、コンクリートや御影石、金属、プラスチックなどの杭が打ち込まれる。この杭には境界の点が分かるように十字などの刻印がされている。
この杭が変わらないことで、境界のトラブルが解消されるわけだ。杭がない、あるいは意図的に動かされたといった場合には、トラブル解消のために土地家屋調査士さんにご登場いただくことになる。
「相続税増税」に関する川柳にも座布団1枚
◆ 初笑い 我が家は課税 対象外
さて、この川柳では、どうして我が家が課税対象外になるのだろう?
不動産を所有していると「固定資産税」や「都市計画税」がかかる。土地の評価額が低いほど、家屋が古くなるほど、税額は低くなる。しかし、基本的に課税されるものなので、固定資産税などを指しているのではないだろう。
とすると、このお宅で課税されないのは、「相続税」だと考えられる。
相続税には相続人の基礎控除があり、その範囲内なら課税対象外となる。ところが、2015年に相続税が増税になった。基礎控除の額が「5000万円+法定相続人の数×1000万円」から「3000万円+法定相続人の数×600万円」に引き下げられたことで、課税対象者が倍増したと言われている。といっても、以前は相続全体の4%程度が課税対象だったので、倍といっても対象は限定される。しかし、大都市である程度の広さの土地を持っていると、評価額が基礎控除額を上回ってしまうケースが多くなる。
つまり、このお宅では、相続税が増税されても、課税対象になる懸念はないという、うれしいような悲しいような状態ということだろう。座布団を1枚差し上げたいところだ。
毎年発表されるサラリーマン川柳も、上手い川柳が多いなあと思うが、今回の川柳もなかなかのものだ。市井の人たちの視線のするどさには、驚かされるばかりだ。
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