この連載では、ひとつのテーマで住まいをつくりあげた方たちにインタビュー。自分らしい空間をつくることになったきっかけやそのライフスタイル、日々豊かに過ごすためのヒントをお伺いします。
光、音、空気が通り抜ける開放的な家づくり
茗荷谷駅から徒歩10分、毎年春には桜の名所としてにぎわう緑豊かな場所に、木暮さんのオフィス兼住まいがあります。木暮さんは、妻、小学6年生の長女と間もなく5歳になる次女の4人家族。そして、とても人懐こい愛猫レンくんと一緒に暮らしています。
「土地をいろいろと探していたときに、偶然にもここだけが空いていたんです。土地の広さは18.6坪とコンパクトなのですが、私も妻もこの桜並木を見渡せるロケーションがとても気に入って、迷うことなく『ここにしよう』と即決しました」
玄関の扉を開けると、シンプルな外観とは裏腹にぬくもりある明るいポーチと廊下。その先には、ダイニングキッチンに直接つながる階段と、オープンな空間が広がります。
「奥行きが長いので、この空間をどうやって有効活用しようか……そこからスタート。自分の家を自分で設計する、ということもあって、やりたいことはどんどん取り入れよう! とチャレンジ魂に火がつきました。そのやりたいことのひとつがスキップフロアです。吹抜けを設けることで、光も風も通り抜ける開放的な空間をつくりたかったんです」と木暮さん。
ちなみに、取材したのは35度の猛暑日で、同行メンバー全員汗だく。これだけ暑いと、冷房を効かせてもなかなか玄関まで冷たい空気が行き渡らないものですが、玄関に一歩入ると冷んやりした空気に。思わず「あぁ、生き返る~」と声が出てしまったほどです。壁や扉で区切られている構造では、こうはいきません。家の隅々まで一定の温度を保てるのも、開放的な空間だからこそ得られるメリットです。
たくさんの友達が来ても大丈夫! 広々と明るいリビング
キッチンからの階段を上ると、そこは明るいリビング。お子さんのピアノや勉強机、ソファを置いてもまだ十分余裕のある広々としたリビングは、吹抜け部分と通常よりやや低くした天井部分で変化を付けています。
「家を建てるときに、一番重視したのがリビングです。私も妻も以前から、友達やお客様をたくさん呼べるリビングが欲しいね、と話していて、できるだけ広いスペースを確保するように設計しました。また、天井って低すぎても高すぎても落ち着かないんです。天井の高さを変えたのは遊び心もありますが、開放的になれる場所と落ち着ける場所、その両方を味わえる狙いもあります」
「我が家に子ども部屋はありません。長女の机はありますが、そのときの気分でリビングやダイニングキッチンのテーブルに移動して勉強するなど、好きな場所で勉強しています。最近、長女は私の仕事部屋が気に入っているようですが(笑)」
リビングにブランコ!? アートとの融合で大人も子どもも楽しめるリビング
リビングで注目したいのは、天井のフック。ここにブランコを取り付ければ、子どもたちが遊べるスペースに早変わり。天井裏には、頑丈な鉄板を使っているので、大人が乗ってもOK! サンドバッグをかけても大丈夫なくらいの強度があるそうです。
また、リビングの壁はアートスペース。アート好きの木暮さん夫婦が飾るお気に入りの作品と並んで、子どもたちがつくった作品がバランス良く飾られています。なかには、お子さんが貼ったと思われる可愛いシールもちらほら……。
「子どもたちは、シールが大好き。あちこちにペタペタ貼っても、基本何も言わずに好きにさせています。部屋の雰囲気にあっていればそのままにしておきますが、これはちょっと……というものは、子どもが飽きたころを見計らって、こっそりはがすのが私の役目です(笑)」
設計のアイデアを生み出している“男のロマン”あふれるアトリエ
木暮さんのアトリエは、まさに“男のロマン”があふれる秘密基地。建築関係の専門書から資料、カタログ……とデッドスペースがないくらい。棚をフル活用して、ぎっしり隙間なく詰め込まれています。
「これでも、まだ収納スペースが足りないくらいなんです(笑)建築技術の月刊誌などは、ちょっと油断するとどんどん溜まっていっちゃうので、必要なページはPDF化してiPadに入れるように心がけています」
日本文化のわびさびを現代風にデザインした茶室
リビングから寝室を経て3階に上っていくと、これまでとガラッと雰囲気が異なる和室がお目見えします。
「妻がやっている茶道を楽しむための空間として茶室をつくりました。中央にはお湯を沸かす炉(ろ)を設け、花や掛物を飾る床の間、和室の反対側にはお茶の準備をする水屋として使えるシンクも設け、伝統的な茶室の要素を現代風にアレンジしました」
「屋根の上に寝転びたい」がきっかけでできた屋上テラス
茶室の障子を開けると、傾斜のある芝生が広がり、屋上ウッドデッキテラスへと続きます。住宅密集地とは思えない開放感は、贅沢そのもの。子どもたちと一緒に花や野菜を育てたり、日向ぼっこをしたり、自然を楽しめる空間になっています。
「きっかけは、屋根の上に寝転がりたい、という妻の希望でした。さすがに屋根は熱いだろうと思い傾斜の高低差に合わせて2種類の芝生を植えることにしました。このテラスから見渡せる桜の景色は、最高です。この土地の決め手となった桜並木の景観を独り占めしたような気分になれます(笑)」
限られた面積、限られた予算のなかでも、楽しむ心を忘れない……家族それぞれの好きなものを全部つめ込んだお宅は、おもちゃ箱を開けたようなワクワク感にあふれています。いつもそこに子どもたちの笑顔があって、にぎやかな声が聞こえる暮らしは、木暮さん夫婦のパワーの源かもしれません。「もしかして人間が入っているのでは!?」と思えるくらい、とてもフレンドリーに接してくれたレンくんの姿は、仲良し家族の象徴そのもののような気がしました。
コメントを残す
コメントを投稿するにはログインしてください。