「葬儀・相続に関するアンケート調査」結果を公表/アスカネット
相続を経験した6割以上が、2024年の相続登記義務化について「全く知らない」
2024年4月1日から施行予定の「土地・建物の相続登記の申請義務化」とは、相続により不動産を取得したときには、名義人の変更をする不動産の登記をしなければならないということ。アスカネットの調査結果によると、2024年4月から相続登記が義務化されることについて、65.2%が「全く知らない」と回答した。一方「知っている」という回答は15.7%だった。
相続については、法律で定められた相続分の割合に従って相続する「法定相続」があるが、生前に「遺言」などでどのように相続してほしいか伝えておくこともできる。また、相続する人が全員で遺産の分割について協議して合意する「遺産分割協議」というやり方で、法定相続分や遺言の内容と異なる割合で相続分を決めることもできる。
特に、主要な相続財産が不動産の場合は、不動産を売却した額を分け合うのか、誰かが不動産を相続して金融資産を別の相続人で分け合うのかなど、具体的に決めておかないと相続が難航することもある。
また、どんな相続財産があるかを明確にしておかないと、遺された家族が知らない、親族で代々相続してきた地方の不動産があったといったこともある。
そのためには、親が生きているうちから、相続財産の内容やどのように相続させるかを親族で話し合っておくことが望ましい。調査結果を見ると、こうした話し合いについて「全くなかった」という回答が57.4%になるなど、準備のないまま相続が発生したこともうかがえる。
なぜ、土地・建物の相続登記が義務化されるのか?
ではなぜ、2024年4月1日から土地・建物の相続登記が義務化されるのだろう?その背景には、「所有者不明土地」の問題がある。国土交通省が2022年6月10日に公表した「令和4年版土地白書」でも、所有者不明土地に対する取組状況が大きく取り上げられている。
所有者不明の土地問題が浮き彫りになると、2018年に「所有者不明土地等対策の推進のための関係閣僚会議」が立ち上がり、「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」が制定され、土地の所有者を合理的に探す仕組みなどが作られた。相続登記は任意だったので、利用していない土地の登記が滞り、登記がされないまま相続が何代も行われた結果、多くの所有者がいるはずなのに登記情報から所有者を探せないという事態が起きていたからだ。
2020年には30年ぶりに「土地基本法」が改正され、土地の所有者に土地を適正に管理する責務を課した。2021年には、民法や不動産登記法の改正が行われ、相続登記等の申請を義務化することなどが定められたほか、所有者不明の土地や管理不全の土地について、裁判所が管理人を選任して管理を命ずることができる制度なども創設された。さらに、相続などにより土地所有権を取得した者が一定の要件の下で、その土地の所有権を国庫に帰属させることができる「相続土地国庫帰属法」が創設された。
こうして、所有者不明土地の対策の一環として、土地・建物の相続登記の義務化を定める不動産登記法の改正が成立したわけだ。これが施行されるのが、2024年4月1日とされている。
相続登記はいつまでにする?罰則はある?
では、相続登記の義務化とは、具体的にどういったことだろう?
不動産を取得した相続人は、そのことを知った日から3年以内に相続登記を行うことが義務づけられる。正当な理由がないのにこれを怠った場合は罰則(過料10万円以下)がある。あわせて、相続人1人からでも登記ができる「相続人申告登記」という新たな登記方法を導入するなど、登記手続きの手間や費用を軽減するなどの措置も取られる。
問題になるのは、遺産分割協議の話し合いがまとまらない場合だ。この場合は、法定相続どおりにいったん登記をして、協議がまとまってから相続状況に応じた登記を申請することになる。この場合も遺産分割が成立した日から3年以内の登記が求められる。
登記の義務化は2024年4月からなので、それ以前に相続した場合は対象外というわけではない。相続後に未登記のままであれば、施行日から3年以内に登記する義務が生じる。また、施行後に家族の知らない相続財産があると分かった場合も、それを知ってから3年以内に登記しなければならない。
したがって、相続が発生する前から登記について確認しておくなど、家族でよく話し合う必要があるだろう。場合によっては、登記にかかわる土地や住宅についてこれまでの経緯を知っている人から情報を集める必要もあるかもしれない。
次に施行されるのが、住所等変更登記の義務化だ
義務化は相続時だけではない。登記簿上の所有者の住所や氏名が変更になった場合も、変更日から2年以内に変更登記の申請が義務化される。これは、転居などによって所有者がわからなくなることを予防するためだ。こちらも正当な理由がないのに義務に違反した場合は、5万円以下の過料の対象となる。
住所などの変更登記は、他の公的機関との情報連携がなされれば手続きが簡素化される。例えば個人であれば、本人の了解を得て登記官が住基ネットの情報に基づいて登記を行うといった仕組みも導入されることになっている。住所等変更登記の義務化やこの簡素化の仕組みについては、2026年4月までに施行されることになっている(施行日は未定)。
本来は、土地や建物の所有権を主張できる決め手となるのが不動産登記だ。それなのに、利用されない土地が生じたことで登記をしない事例が増え、それが何代も繰り返されることで、所有者を特定するのに時間も手間もかかるという事態になっている。これからは、原則通り、後に遺された人たちが困らないように、きちんと登記しよう。
アスカネット「葬儀・相続に関するアンケート調査」
国土交通省「令和4年版『土地白書』の公表について」
法務省「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫帰属法)」