武蔵野市に店舗兼用の「なりわい賃貸住宅」が誕生!住宅街に顔の見える交流拠…

武蔵野市に店舗兼用の「なりわい賃貸住宅」が誕生!住宅街に顔の見える交流拠点を

店舗兼住宅のオープンな空間が地域の人を集める拠点となる(画像提供:ブルースタジオ)

路線バスの折返場をご存じだろうか? 筆者はそうした場所を、都市部というより観光地でよく見かける。バスが折り返して出発するまで、乗車する人のたまり場になる。そんな場所を活用した、“地域の交流拠点”となるユニークな賃貸住宅ができると聞いて、見学に行ってみた。

バスの折返場に“暮らしの「町あい所」”=hocco(ホッコ)誕生

見学に行ったのは、小田急バスが東京都武蔵野市にある自社のバス折返場を使って、“暮らしの「町あい所」”をコンセプトに掲げて建てた複合施設「hocco(ホッコ)」だ。地域の人が気軽に立ち寄りたくなる施設だという。

JR中央線武蔵境駅から折返場となる「桜堤上水端」までバスで向かう途中、亜細亜大学を過ぎたころから目についたのが、数多くのマンションが建ち並んでいることだ。なるほど、これだけ多くの人が住んでいるなら、人が集まるポテンシャルは大きいだろう。

この辺りには、高度経済成長期の1959年(昭和34年)以降、153棟全1829戸の公団の団地が形成された。そのころには、バスの折返場の近くでハイヤー事業も行われていた。団地はその後、老朽化に伴い建て替えられたり民間の新築マンションが建設されたりなどして、現在に至っている。さらに、法政大学と亜細亜大学が周辺にあることから、単身の若者も住んでおり、多様な世代が住んでいるという地域特性がある。

その折返場の近く、駐車場だった以前のハイヤー営業所の土地に、今回13戸の賃貸住宅が誕生した。ただし、単なる賃貸住宅では人を集めることは難しい。では、どうやって人が集まる拠点にしようというのだろう?

中庭を囲むようにメゾネットの賃貸住宅が13戸建つ(画像提供:ブルースタジオ)

中庭を囲むようにメゾネットの賃貸住宅が13戸建つ(画像提供:ブルースタジオ)

多様なモビリティと人が集まる仕掛けで「町あい所」に

見学した日は、あいにく台風で雨が降り続いていたので、筆者が撮影した画像も残念ながら雨に濡れていることをご容赦いただきたい。

さて、バスの終点で降りてすぐ目についたのが、Amazonのロゴが入った宅配ボックスだ。大きな宅配ボックスを利用できるのは入居者に限らない。居住者専用の宅配ボックスは壁の側面にあり、ほかにシェアサイクルのポートも用意されている。

バスの終点として『桜堤上水端「hocco」』が新設され、折返場で待機した後、始発のバス停『団地上水端』に移動する(筆者撮影)

バスの終点として『桜堤上水端「hocco」』が新設され、折返場で待機した後、始発のバス停『団地上水端』に移動する(筆者撮影)

左:賃貸居住者以外も利用できる宅配ボックス。右:壁側面に居住者専用の宅配ボックス。シェアサイクルのポートも5台分用意されている(筆者撮影)

左:賃貸居住者以外も利用できる宅配ボックス。右:壁側面に居住者専用の宅配ボックス。シェアサイクルのポートも5台分用意されている(筆者撮影)

全体像を把握するために、広報資料の配置図を見よう。シェアサイクルのほかに、シェアカーも用意されるので、バス、自転車、車が利用できる。入り口付近の広場にはキッチンカーも呼び込む予定で、小さな公園やベンチで寛ぎながら食べることもできる。

そして次の仕掛けが、中庭を囲むように建つ賃貸住宅群だ。

hocco配置図(広報用資料より転載)

hocco配置図(広報用資料より転載)

「なりわい賃貸住宅」が地域コミュニティのカギに

第1種低層住居専用地域でも、面積の小さい店舗併用住宅が建てられる。営業できる業務に一定の制限はあるものの、店舗部分で商品を販売したり飲食物を提供したりできる。hoccoでは、13戸中のうち5戸を店舗兼用住宅とした。店舗兼用の賃貸住宅、つまり「なりわい賃貸住宅」が人を呼び込むことで、交流拠点はさらに魅力的なものになるという仕掛けだ。

賃貸住宅は、13戸すべてが木造2階建てのメゾネット、大きな土間付きの1LDKだ。専有面積は、52.9平米~58.99平米。店舗兼用の場合は、「土間」と玄関前の「軒下」で“なりわい”を行うことができる。店舗兼用で最も多いAタイプの土間は5.5畳ある。また、専用住宅でも最も多いBタイプの土間は6.5畳あり、自転車をいじったりアトリエにしたりなどの趣味の空間やアウトドア風の空間として使える。

上のAタイプが店舗兼用住宅、下のBタイプが専用住宅。大きな違いは、店舗兼用では、土間と居室を仕切る扉があるが、専用住宅は仕切りがないこと(画像提供:ブルースタジオ)

上のAタイプが店舗兼用住宅、下のBタイプが専用住宅。大きな違いは、店舗兼用では、土間と居室を仕切る扉があるが、専用住宅は仕切りがないこと(画像提供:ブルースタジオ)

どちらもかなり開放的で、最初はセキュリティに懸念を持ったが、モニター付きインターホンや鍵付きのメールボックスなどがあり、十分な対策がなされていた。「人の目が常にあるので侵入しづらい」という効果もあるだろう。

インターホンとメールボックス(筆者撮影)

インターホンとメールボックス(筆者撮影)

また、開放的な間取りは冷暖房効率も気になる。一般的な賃貸住宅に比べて、高気密・高断熱の温熱環境性能を高めているという。家賃(共益費別)は、店舗併用で16万6788円~17万6610円、住宅専用で14万6000円~16万7000円。全戸ペット飼育可能だ。

暮らしと仕事に境界のない「なりわい暮らし」のポテンシャルは大きい?

hoccoを企画・運営を担当するのは、デザイン性の高いリノベーションで知られるブルースタジオだ。この地域は周辺のマンション群に新しい生活者が数多く住んでいて、駅を中心とする商業地にはない可能性があるという。駅から離れたバス終点の住宅地に「なりわい」を通じて、顔が見える小さなコミュニケーションを醸成することで、にぎわいのある街ができることを狙っている。

コンセプトの説明をする、ブルースタジオの専務取締役・クリエイティブディレクターの大島芳彦さん(筆者撮影)

コンセプトの説明をする、ブルースタジオの専務取締役・クリエイティブディレクターの大島芳彦さん(筆者撮影)

では、実際の反響はどうなのだろう?見学時時点で、70件近い反響数、40件を超える見学があり、申し込みが5件あるという。うち2件が店舗兼用住宅で、総菜屋さん、古本屋さんを予定しているという。ほかにも、雑貨の販売やコーヒーのテイクアウトなどをしたいという問い合わせもあるとか。

同社の専務取締役・クリエイティブディレクターの大島芳彦さんによると、「なりわい暮らし」は地域の拠点となるポテンシャルが大きいという。地域の活性化については、プレーヤーがいないのが課題。地域に住む生活者が、日常を豊かにするという視点で人と人をつなぐことが、地域を活性化する原動力になると。

同社のなりわい暮らしの事例は、すでに神奈川県茅ケ崎市「TSUBANA(ツバナ)」で実証済みだ。さらに、福島県双葉町でも計画している。

hoccoの賃料は、性能や仕様の高さもあって周辺相場と比べて1.1~1.2倍に設定されている。それでも問い合わせが多いのは、暮らしの延長線上でなりわいができる、こうした賃貸住宅が少ないからだ。問い合わせは、地元の武蔵野市を中心に、JR中央線沿線や23区からと広範囲にわたるという。

店舗を別に借りるのはハードルが高いが、自宅の延長線上なら空いた時間に営業するといったことも可能だ。地域の人たちと交流しながら、自分の暮らしを豊かにしたいと思っている、なりわい予備軍も多くいるだろう。そうした人が一歩踏み出せるのが、なりわい賃貸住宅だろう。居住者がそろうとどういった賑わいができるのか、今後の展開が楽しみだ。

引用元: suumo.jp/journal

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